215509 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

沖縄自治研究会

沖縄自治研究会

ドイツ連邦制 カナダ連邦制

第2回研究会
1.ドイツ連邦制: 片木淳(早稲田大学大学院教授)
2.カナダ連邦制: 吉田健正(桜美林大学教授)
日時 平成16年5月23日(日)
場所 早稲田大学


○片木淳氏  当時、私は第二臨調におったんですが、ドイツの地方自治制度については、市町村は注目されていましたけれども、連邦制のことはあまり注目されてなかった。しかし、私は連邦制度のほうが、地方自治にとって非常におもしろいなと、自治省でございましたので問題意識を持っておりました。土光臨調での勤務が終わったら、すぐ、あんまり当時ドイツなんか行きたがる人おらなかったんですが、ジェトロのポストがあいているので行かないかということで行きました。日本の地方自治と比べると、逆転の発想と言いますか、非常に違います。これはおもしろいということで、最初にそのときのことを本に書きました。その後、日本の地方分権も進んできましたし、ドイツのほうも統一されたということで気になっていたので、役人時代に、実はこの本は去年の6月に出ましたけれども、その前、まだ早稲田に来る前に片手間でインターネットという便利なもので情報を集めたりして書いたもので、それほど突っ込んだことは書いておりませんが、私自身は、連邦制に非常に興味を持っていますし、引き続き連邦論という授業も今大学院で教えています。

 この間、内閣府のほうからドイツのことを書いているので知恵を貸してくれと言って役人が来たんですけれども、そのときも申し上げたんですが、やはり北海道と沖縄というのが一番注目されるということで、ちょっと沖縄のほうはまだ出てきていませんが、北海道は北海道特区で、あのままの形ですぐ地域的には州を構成できますので、私も北海道の道庁に2年勤務して、総務部長をしておったんですけれども、だから北海道は知っていますけれども、北海道は地域的にそうですが、やっぱり沖縄というのは琉球王国があったということで、文化的にも非常にそういう基盤があるなと。だから、日本で道州制とか連邦制の議論をするときに、最初に出てくるトップランナーは北海道と沖縄ではないかということを申し上げまして、私自身も、そういう意味で琉球王国はどうなるのかあまり勉強はしておりませんけれども、大変興味は持っております。

 ということで、どの程度のお話ができるかわかりませんが、今島袋さんからお話があったように、沖縄のことを考えるときに各国の連邦制を参考にしているということですので、特にこのドイツの連邦制はかなり特徴がありますので、その点を中心にしながらどんな形になっているかなというところを、ざっと概観を得るという程度になると思いますけれども、お話をさせてください。

 ちょっと私も授業の準備などに追われていまして、あんまりドイツの情報をフォローしていませんので、最新情報には弱いところありますがご容赦いただきたいと思います。

 まず2ページなんですが、皆さんご案内のとおりアメリカ合衆国憲法とちょっと違うということは、結局、よく機能的分担とか何か言われておりますが、「立法・行政・司法」それぞれひとまとまりでぽんと連邦か州かという分け方ではなしに、「立法・行政・司法」それぞれの分野ごとに輪切りにしていると言いますか、分けて連邦と州の分担関係を定めているというのが指摘されるドイツの連邦制の事務配分、権限配分の分野での特色です。

 それからもう一つは、協調的連邦制とかいうことで、連邦と州が今までは非常に協力的に、逆に言えば非常に入り組んで、連邦と州が相談しながら協力し合って仕事をしている体制だというふうに言われてきました。今それに対する批判が出てきておりますけれども、そういうところが特徴になっております。

 まず立法権で、資料は後につけてありますが、この2ページ、3ページは特徴的なことだけ総括しております。

 まず立法権は連邦及び州、具体的に四つの分野に分けております。後で出てきます。連邦にウエイトがかかっていると。競合的立法権ということで、大体連邦が立法権を行使していると。

 ただ、それでは立法問題について州のほうの介入、関与はないかというとそれは全然違いまして、連邦参議院、これは69人からなりますけれども、日本と違いまして選挙で選ばれるのではない。ご案内のとおり各州首相以下大臣が多いところで6人、少ないところで3人集まってくる。その69人が、州の利害に関係するもののチェックをしているということで、非常に強力にまさに連邦の立法そのものに参画しているということで、連邦なのか州なのかわからないぐらいの感じになっているというのが非常に大きな特徴です。これも今問題になっていますが。

 それから行政権にいきますと、行政権はドイツの基本法という憲法、グルンドゲゼッツでGGで引きますけれども、それの規定では、連邦法の執行は州の固有の事務であるという表現をしていまして、ドイツの体制は連邦法の執行が州の事務だという、こういう考え方。それから、だいぶ前になりますけれども共同事務というような概念もつくってお互い協力して仕事をしようという分野もございます。

 それから、基本法30条で国家的権能はすべてまず州に帰属するという一般規定がありまして、それからいって司法権も当然州。裁判所も州だということですが、これは実際はそこにありますとおり分野ごとに裁判所は分かれていますけれども、連邦、地方政府の裁判所はあります。連邦以外は州だということですが、あまり裁判の世界では連邦主義ということは意識されてないということも言われております。特に一般国民はあんまりどっちでもいいという感じのようです。

 以上が権限配分ですが、2番目に税と財政の問題がどうなるかという問題になるわけですけれども、特徴的なことは税源の配分でこれも共同税という、連邦と州に共同に属しているというようなイメージで、もちろん連邦国家ですから税務署は州の役所であると。州が取ったものを連邦にも配分するわけですけれども、ですから日本と逆立ちしているわけです。この所得税、法人税、売上税、付加価値税ですけれども、この収入については共同税だということで、これが70何%ということで大層を占めているというのがドイツの特色であります。

 それから、租税に関する権限。これも州の税務署が基本にありますのであれなんですが、これもさっきと同じように立法、それから金がどこに所属しているか、それからそれの租税行政ですね。税務行政をどういうふうにやるかということは、それぞれごとに決められている。これも後で出てまいります。

 それから特徴として、財政調整。これは各州の水平的財政調整ということで、連邦を介さないで州から州へ渡すと。連邦法で決めるので、全く関与がないというわけではありませんが、建前として水平的財政調整的だと。それから、縦の垂直的的財政調整もあります。
 以上がおおまかなところで、特に最近の話題としましては3ページにあります、連邦制度委員会。正確にはここの下にちょっと書いてありますとおり、連邦議会と連邦参議院の連邦国家的秩序近代化のための委員会という。連邦国家的秩序の近代化に関する委員会。こういうものが去年の11月7日に発足しております。いろいろヒアリングをしたりしてどんどん作業を進めているようですが、ことしの年末までに改革案を出す。それは先ほど申し上げましたように、3ページの上にちょっと書いてありますけれども、協調的な連邦主義に対して、連邦が州行政に関与していると、拡大してきていると。そういう弊害が一面にあるし、また今度は州によって連邦行政のさっきの参議院を通じての影響力の行使。お互いに複雑に絡み合って、非常に不明確で、国民が見たときに責任がどこにあるのかはっきりしない。

 もっと具体的には、今連邦政府は社会民主党系の政権。連邦参議院のほうはキリスト教民主同盟(CDU)のほうの野党がとっているということで、逆転していることから、さっき言いましたように連邦参議院の権能が非常に強いですから、ことあるごとに改革案が吹っ飛ばされているということで、どうなんだと。こういうふうなことでは、もう仕事にならんというようなこともありまして、両者の思惑いろいろあって、今こういう合同委員会がつくられております。

 その構成はそこにありますとおり、両院から16人の委員が出ています。州代表、連邦政府代表4人、市町村代表3人ということで構成されております。連邦参議院からということは、各州執行部のほうから出ているということですね。

 それから、議論の内容は、立法権限の配分で州の議会がやる仕事ではないかといったこと。それから連邦参議院がどういうわけかやたらに強いので、これは何とかならないかという逆の話。それから不透明だと。両院の見解が異なったときには協議会でやるんですけど、そこで少人数で決めてしまうと、国民のほうには全然映らないという問題。何をやっているかわからないという問題。

 それから、EUへの関係があって、迅速な対処が遅れているという認識があるようなんです。

 それから6番目は州の財政的裁量、これが奪われているという意味です。そういうことで、いろいろな課題は、これは問題だというだけで方向性が出たわけではありませんけれども、こういうものを中心に議論をずっと積み重ねているということで、ことしの終わりには具体的回答案ができるというのが現状のようであります。

 それで4ページですが、これはだから今申し上げたことをずっと整理をしたものですけれども、まずドイツ基本法の30条には、権能の行使。権能と任務の遂行は似たようなことをですけど、これは州の権限だと。こういう州優先の原則をまずぽんと書いてあるということであります。

 それから立法権については、通常四つに分類されております。専属的立法権ももちろんあって、これは州は口出しできませんけれども、外交、国防、貨幣、関税、その他のことです。

 それから、イが競合的立法。ここが両者が乗り出せる分野なんですが、連邦法が制定されますと、連邦法は州法を破るという規定がありまして、もちろん連邦法優先になりますので、ここで連邦に立法権を行使されると州はやることなくなるということで、非常に広範な分野で連邦が立法権が行使しているんだと。

 私の本の何ページかに、いろいろと細かいことは「注」にして載せてあります。見ていただきたいと思います。

 それから、大綱的立法というやりもありまして、これは連邦は単に大綱的定めをするということで、細目は州に委ねられるということで、官吏大綱法とか高等教育機関の大学関係の大綱法とか、そういうものいろいろあるようです。

 それから、原則的立法。これは同じなんですけれども、名宛人が州だけではなしに連邦も名宛人とされているといったもので、連邦と州の予算の基本を定める予算基本法といったものがこの中に分類されております。これが立法権のあり方です。

 特に競合的立法権の結果、法律は大体連邦のほうで決められているという体制だと評価されております。

 それから5ページは、連邦参議院というちょっと簡単に触れましたけれども、もちろん基本法に規定がありまして、任務は、各州は連邦参議院を通じて連邦の立法と行政と、それからEUの事項の決定に参画すると。EUはできてからもちろん基本法改正されて追加されたわけですけれども、位置づけとしては連邦参議院を通じて16あります各州が連邦行政、連邦立法、EU関係に入っていく、こういう形になっております。

 それで、参議院の構成はさっき申し上げたように、選挙はありません。アメリカですと、州各2人ずつ100人を上院が議員を選びますけれども、連邦参議院はあくまで全部自動的に永久機関と言っていますけれども、各州で選挙があって、その結果、議員内閣制ですから執行部が決まる。それで自動的に連邦参議院の構成が、州の選挙ごとにずっと変わっていくという、そういう仕組みになっております。

 票数ですけれども、この下の表の右から2番目に書いておりますとおり、一番多いのが人口にやや比例させてあると。これ、そのまま比例させてやると確か27倍ぐらいになるはずですが、例えばこれ左に16州ありますが、一番小さいのがブレーメンですね。0.66というのは66万人だと。一番大きいのが下から七つ目ほどにあるノルトライン=ウエストファーレンというのが1,800万人。このノルドライン1,800と66ですから、相当な開きがあるんですが、票数はノルドラン、デストワーレンが6で、ブレーメンが3ということですから、緩い比例にしてあるということで、これもアメリカの上院とは違う。一律ではないということで、ちょっと妥協したようなという票数になっております。

 これは、昔は5だったんですけど、東ドイツが戻ってきて5州が入ったときに、全体を考えて、上に戻っていただきますと、各州は少なくとも3票、あと人口段階で200万人を超えたら4票、600万人を超えたら5票、700万人を超えたら6票という形になっております。

 この州が出てきましたのでついでに申し上げますと、一番上の二つ、バーデン=ビュテンベルクというところとバイエルン、これが1,000万を超えていると。1,000万を超えたのは三つある。300万、400万の普通の州。

 それから、ドイツが非常に特徴的なのは、先ほど申し上げたブレーメンとその下のハンブルグ、それから上から三つ目のベルリンですね。この三つがいわゆる都市州ということで、市でありながら州であると。両方の機能を持っているということですね。ベルリンが1市で1州、それからハンブルグも1市で1州ですが、ブレーメンはこれまた複雑で、わずか66万人の中がまた2市に分かれていまして、2市からなる1州ということで非常に複雑なやり方をしております。

 ブレーメン、鳥取県よりちょっと大きいというぐらいで、大体人口は鳥取県並み。面積にしてみたらものすごく小さいです。私は主張しているのは、ブレーメンみたいな小さなところでももう州を構えておれるんだから、そうあまり面積とか人口とか規模考えなくてもやる気さえあればできるんじゃないかと、こういう一つの。


○江上能義氏  沖縄の半分しかない。


○片木淳氏  人口はそうですね。そういうことで、小なりといえどもいけるんじゃないかという論拠で。

 ちょっと余談ですけれども、この間、静岡県がやっぱり道州制の研究会を開きまして、私もメンバーに入れてもらって議論しているときに、静岡の石川知事に本も差し上げて、ブレーメンはこんなに小さくでやっていますよと、構えていますよと言ったら、静岡は人口400万人なんですね。大きいです。知事が、そうか、じゃ俺も前から区域を大きくしなくても権限をよこせということを考えているということで、去年の11月13日付で最終報告を出していますけれども、その中では政令県構想というのをぶちかまして、これは結局我々もそれがいいんじゃないですかと議論してつくったんですけど。ブロックの大きなものをねらわなくてもいいんじゃないかなと。静岡ぐらいの大きさになれば。


○江上能義氏  400万もいるから。


○片木淳氏  そう。市町村に指定都市制度がありますね。政令指定都市制度、それのアナロジーで県に政令県構想と。それで、国からよこせと。国の出先機関はもういらないという、そういう発想で。


○江上能義氏  政令県構想ですか。


○片木淳氏  政令県構想。それを静岡がこの後、それが11月だったんですけど、この冬に例の構造改革特区の申請の中に要求して、それも早速やったんですよ。


○江上能義氏  特別県構想みたいなものを政令都市としたんですね。


○片木淳氏  同じです。北海道特区と似たような形で。ただ、それが内閣府のほうで、これちょっと私もあまりフォローしてないんですけど、噂程度なんですけど、ちょっと問題が大きすぎると。これ今28次地方制度調査会で議論しているんですが、道州制の根本問題みたいなものだから、すぐ特区でやるのはかなりきついですなと言って、今何か宙ぶらりんになったか、返されたか、結論が出てないかというてん末で、しかし、ちょっと一石を投じたという流れになっています。参考までに。

 ということが1点です。それから、ちょっと続きになりますけど、連邦参議院というのは非常に強くて、別立てというか、立て方がちょっとダブっていますけれども、さっと見ていただきたいと思いますが、連邦の審議は連邦参議院の同意なしには成立しないと、連邦法はですね。そういうことが一つの大きな特色になっております。

 それを細かく言いますと、3・3・2に書いてありますように、どういう法律が参議院の同意を要するかと。大体、連邦議会に出てきている法律の半分は、統計的に50%前後なんですが、参議院の同意を要するということで、そういう実績になっておりますけれども、もちろん基本法の改正は3分の2の多数がいると。

 あとは、州の利害に関係する法律が全部かかってくるということで、財政ですと付加価値税で取り分がありますから、これ決めたりですね。法人もそうですけど。それから、税務官庁の組織を定める法律がある。そういう財政関係の法律が引っかかってくると。

 それから、州の行政高権という言い方をしますけれども、行政権限を侵害するということで、ここで州の官庁組織と行政組織に関する特別法ということになっておりますが、大体の連邦法は特に州の行政手続きに関連しまして、ちょっとでも引っかかっているともう州の同意が必要だということになりまして、かなり参議院がイチャモンをそれにつけることができる機会があるということになっております。

 共同事務についても後でちょっと出てくると思いますが、同意が必要だと。

 それから、同意がいらない法律もここにありますとおり、異議を言えるわけです。異議を言うと、もう一遍議決をやり直しということでこれも牽制できる力を持っていると。

 それから、もちろん発案権。それから、さっき立法と行政に関与、参画するという規定がありましたけれども、連邦政府の政令みたいなものに関与していけるということで、法規命令に対する同意とか、一般行政規則に対する同意。それから、後で出てきますけれども、いろいろな裁判所の人事とか、訴訟の提起、それから人事、そういう行政に対していろいろものが言えるという強い権限を持っています。

 特に最近注目されますのは、EU関係事項について、マーストリスト条約が批准されまして、これに伴って基本法の改正が行われるんですけれども、ここで補完原則に従いドイツ基本法と本質的に同等な基本的人権を保障するEUの発展という、留保条項を入れて、EUがちゃんとするんだったら協力するという規定を入れて、補完原則をうたいまして、何でもかんでもEUのままにはならないよという感じの基本法の改定もしております。

 その中で、7ページにありますように、当然かもしれませんが、今まで各州が持っていたそういう権限をEUに移譲するということになりますと、連邦参議院の同意が必要と。

 それから、これも後の話になってもうできてしまっていますけど、条約の改正はもちろん連邦参議院の3分の2の同意が必要ということになります。

 そのほか細々とEU関係事項へ、連邦参議院が関与できる。もちろん情報は提供してというふうになっていますが、そういう細かい関与の権限が追加されております。

 その他は、さっき申し上げたように、行政の関係でいろいろなこれもまた権限を持っているということで、特に緊急事態になりますと、連邦議会が機能しないと連邦参議院はもちろんそれを補完するといったことも基本法に書かれております。

 以上が、連邦と州の立法権の関係、そしてその連邦に配分されておるということになった連邦の立法権について、各州から代表を出している連邦参議院がそのまま参画するという関係をご説明しましたけれども、次は行政権ということで。

 これも、いつも言われている常識的なことですけれども、連邦固有行政、それから連邦直接ではない方法上の団体等でやる間接連邦行政、それから州に対して連邦委任行政という概念がありまして、日本で言えば法定受託事務みたいなものかと思いますけれども、それによって州が実施すると。

 日本の受託事務よりは、もうちょっと連邦のほうにウエイトがありますね。日本の受託事務は完全に自治体の事務ですけれども、ドイツはちょっと関与がいろいろあるようです。

 それから、さっき申し上げましたように州の固有行政ということで、連邦法の執行を固有の事務として執行するということで、ドイツの考え方は、冒頭申し上げた機能的分担と言いますか、連邦でつくった連邦レベルの法律の執行は、これは執行の段階になると州の固有事務だと、こういう分け方をしているということです。それから、州自身の州法の執行はもちろん州の行政だと。

 それから、ちょっとさっき触れました共同事務というのは、これ時々特徴的なことだということで取り上げられますが、最近はあまり評判よくないようですけれども、だいぶ前に69年だったかと覚えていますが、基本法の改正がなされまして、一緒にやることが増えたということで、特に大学等の高等教育機関、それから地域の経済構造の改善、農業、これにつきましては共同事務ということで、一緒にやるというよりは連邦が協力するという規定になっていますけれども、そういう事務。

 そして、そうなると、連邦は2分の1を負担しないといかんとかいう財政も含めて、一定の効果つきでこういう事務がなされております。

 それから司法権は、これは参考までですが、網掛けしたのが連邦の裁判所、それ以外の白は州所属の裁判所というふうになっております。裁判も州が担うと。

 それから9ページですが、税金の問題です。さっき言いました共同税ですね。3税、この9ページ下の1、2のところに書いてあります。

 所得税、全体のうちから市町村分15%、これ2002年現在ですね。市町村分15%取った残り、それから法人税、これはもう基本法にかちっと書いてありまして、連邦と州が1:1で分ける。

 売上税の付加価値税ですが、売上税。これについては、これは交渉で毎年ちょうちょうはっしで決めているわけですけれども、2002年の数字は連邦40%、州46.5%、EUが11.5%と、市町村にも2.1%ということで渡るようになっています。これはさっき言いました連邦参議院の同意を要するということになっております。

 それで、上の円グラフを見ていただきますと、色つきではなくなっていますけど、共同税が71.8%ということで100円換算で34兆円。もうちょっといきますが、3,471億ユーロですね。そういうようなことで、大層が今言いました共同3税になっているということで、あと連邦で関税、消費税それぞれあると。後でどういう税があるか出てきます。

 それから、共同税。今言った3税がどういうふうに取り分で取られているかというのが、これ全体の数字ですけれども、この下にドイツ連邦財務省の、これ去年の報告書で作成していますので、ちょっと必ずしも最新版でないかもしれませんが、当時は2006年まで決まっていまして、それをここに書いてあるんですが。

 例えばことし2004年だと、下から連邦43%、それから州が40.6%。連邦の取り分をずっと削って州を増やしていく、そういう流れになっていますね。それで、その上が市町村。EUにもいきますから4.5~4.6%はEUにいくと。2004年は4.7というような形になっております。交付税を巡る国と地方のけんかと似たような感じではあるんですけれども、そういうことになっています。

 それから11ページはさっき申し上げた、今度は租税に関する、特に行政権限がどうなっているかということですが、やはり立法権限は連邦がかなり行使しておりまして、共同税三つですけれども、輸入の売り上げと売上税をちょっと区別していますが、共同税、立法はもう連邦だと。 

 ついでに、下を見てもらったほうがよろしいかもしれませんね。連邦税にはどんなものがあるかというと、ほかの間接税、特別の消費税のようなものが連邦税になっております。それは、連邦の税関が所管していまして、一番右ですけれども、さっき言いましたように、それ以外の税金は州に税務署がありますので州が取っているということなっております。

 州税は、また左のほうにいきまして、ビール税とか、自動車税、相続税、不動産取得税と。日本の県税のようなものを取っております。市町村ももちろんちょこちょこ取っています。ただし、法律の立法をだれがするかというと、日本でも地方税法ですけれども、ドイツでも連邦法だと。一部、州が市町村税について立法権を行使していると。

 どこに入ってくるかというと、共同税はさっき言いましたように、連邦と州にある割合で入っていくと。もちろん連邦税は連邦に、州税は州に、市町村税は市町村に入りますが、その行政権限をだれがやっているかというと、共同税も州が委任を受けてやっていると。売り上げ税も含めてですね。

 ただ、輸入関係だけは税関で連邦がやっているということですけれども、ということで、ずっと州が行政権限を行使しているという形がおおまかなところです。

 以上が税金ですけれども、今度は財政問題がどうなっているかということになりますと、一つは州間財政調整ということで、州と州との間でやりとりをするということで、それはどういう仕組みかというのはここに書いてあります。

 日本の交付税ほどではありませんけれども、ラフに各州の基準となる財政力と。それから、実際の財政力と、その差を出していると。それについては、いろいろな財政事情を考慮した補正のようなものを行って、それで調整させるということで、92%までの部分については100%保障し、92~100%までの部分については37.5%。これが、水平的財政調整なんですが、これに加えて次に出てきます垂直的財政調整というので、残りの足りない部分を連邦が面倒見ているということです。ただ、12ページの一番下に書いてありますとおり、連邦憲法裁判所が今のやり方は違憲だと言って、だいぶ前に判決を出しまして、がらっと変えようということで、税収を取るインセンティブをもうちょっと出すとか、競争原理をいろいろ出すという、そういう感じの改革がなされまして、新財政調整法といって、来年の1月1日から施行される予定のはずです。今言っているような仕組みはもっとがらっと変わって、もうちょっと競争原理を入れた厳しい内容になっております。

 それから13ページは、州間財政調整はどうなのかということで、下に棒が出ているのはこれは取られるほうで上がもらうほうということで、これを見ていただきますと、バーデン=ヴェルテンベルグとか、これ南部のバイエルン、これ要するにドイツの南部のオーストリアとかスイスに近いほうは、先端工業の誘致に努めて非常に調子がいいわけですね。バーデン=ヴェルテンベルグ、バイエルン、それからヘッセン、これはフランクフルトのある州ですけれども、そこらへんあたりが中心として、そこから上がったものを特にベルリンとか旧東ドイツの州に出しているという構造になっております。

 それから、垂直財政調整はさっきも言いましたように、今度は連邦が自らの中から補填していって最後は99.5%までしているという仕組みになっております。2000年には200億ぐらい出しておりました。200億マルクですから、100円換算で2兆円ということですね。

 それから、あと14ページ以下は常識的なドイツの資料をつけておりますので、また折に触れて見ていただければいいと思います。14ページの最初は、16州の首都、州都ですね。それから歴史と政治体制。

 これは、全部外務省のホームページから取っておりますね。17ページの上から4を見ていただきますと、これは2002年の9月22日に、連邦議会議員選挙がありまして、実はさっき紹介しました南部のバイエルンの、あそこだけはCUSではなしにCSU、キリスト教社会同盟ですね。そこのシュトイバーがさっき言いましたように非常に経済もいいと、治安もいいということで、対抗馬としても勝つんじゃないかと言っておったんですけれども、皆さんご存知のとおり、例のエルベ川の洪水問題の対応と、それからイラク問題でアメリカに反対したというので、ぐっと盛り返しまして今また政権を担っていると。

 シュレーダーは、ニーダーザクセン州首相経験者と。対抗馬もバイエルンの州首相。その前のコールやらみんな歴代総理。ほとんど例外ないんじゃないでしょうかね。州首相とか、州の内務大臣とか、ハンブルグの内務大臣だとかシュミッツとか、そういう状況です。

 ドイツの16州は、さっき申し上げたように66万人のブレーメン、これは鳥取県と同程度というようなことを書いてあります。

 18ページは、ドイツの状況です。

 以上、ざっとはしょりまして聞きにくかったかもしれませんが、終わらせていただきます。


○島袋純氏  どうもありがとうございます。そんなに時間的に余裕があるわけではなかったので大体40分ぐらいということを前もってお願いしてあったので、守っていただいてどうもありがとうございます。
 引き続いて、カナダ連邦制をやって、それで一緒に質問の時間ということでお願いしましょうね。
 早速、吉田先生、お願いします。


© Rakuten Group, Inc.